サドル椅子開発ストーリー

アイデアから最終製品へ

バンバック・サドル・シートのアイデアは、私が、脳性麻痺や脳卒中、髄膜炎、自動車事故などにより脳に損傷を受けた人達のリハビリテーションに関わっていた時に生まれました。何故ならば、この様な人達が直面する問題の中で最も一般的なのは、バランスがうまくとれないということです。脳に損傷を受けた人は、立っていることはおろか、自分一人で座ることもできない場合がよくあります。さらに、近位関節が安定しないために四肢をうまく動かすことが難しくなります。そのような場合の治療の一環としてよく行なわれていたのが乗馬であり、これは治療において重要な要素でした。この楽しいアウトドアでのエクササイズは大変役に立つことが証明されましたし、参加者全員が楽しんでいました。さらに重要なのは、椅子やベンチ、車椅子などでサポートなしで座ることのできなかった多くの人達が、馬の背に座っている時は、自分一人でバランスがとれ、左右釣り合いのとれた姿勢を保つことができたということです。こうした人達は、全体的な機能にも向上が見られました。多くの人は、リハビリテーション病棟で普通の椅子に座っていた時はサポートなしで座ろうとすると落ちてしまっていたのに、馬に乗っていた時は自分でうまく姿勢を直し、何時間もサポートなしで座ったり、さらには馬を走らせたりすることができました。

「なぜ、サドルに座ることと普通の椅子に座ることとには、このように大きな違いがあるのだろう?」—こう考えていた私の頭に、「馬なしで『サドル』ポジションを再現してみよう」というアイデアが浮かびました。脚を左右に広げ何かをまたぐ座り方は既に、機能面での治療のためにジムで使うロールや平均台を使って導入されていました。

しかしこれらの器具には、馬に座った時のような、1人で座る際の支えとなるベースとしての効果はありませんでした。サドルに座り、脚を外側に開いた状態で体を支えなければ、骨盤は後ろに下がり、バランスがとれなくなるのです。

この事について説明している文献はないかと、3人の同僚と一緒に図書館で調査を開始しました。調査したあらゆる文献のうち、Dr. A.C. Mandalが姿勢をテーマに書いた論文が一番関連性の高いことがわかりました。Dr. A.C. Mandalによる「座っている時の最良の姿勢は馬の背に座っている時に得られることは疑いの余地がない。骨盤と太ももの付け根の関節が45度の角度に曲がった、休んでいるポジションの時、腰部のカーブが維持される」という記述がこの調査の基礎となりました。

Nachemson, Keegan, Bridgre, Brunswik, Schoberthによる各研究も、「平らな座面の椅子に座った時に脊椎の円板と円板の間にかかるプレッシャーがかなり大きくなる」というMandalの結論を裏付けています。これは、骨盤と太ももの付け根の関節が60度以上に曲がった時、腰部の自然なカーブが失われるためです。馬に乗っている姿勢の時の背骨は、自然のカーブに近く、椎間板内にかかるプレッシャーも最小になります。椎間板内にかかるプレッシャーが小さくなると、平らな座面の椅子に座った時のように腰部が曲がったままの状態で座ることから来る痛みが緩和されます。こうした主張を裏付けるため私達は、日常生活ではひどい腰痛に悩まされているのに馬に乗ると痛みが緩和するという乗馬者達のケース・スタディ報告を多く集めました。

そこで、腰部の自然なカーブを維持するために仕事中に脚を開いて何かにまたがったり、サドルや椅子を使ったりすることの有効性を調べることにしました。私達は、作業療法士2人、理学療法士1人、エンジニア1人からなるチームを結成し、試作品の椅子をいくつか作り、試験を行ないました。そして最終的なデザインを決定し、最終バージョンを作りました。この椅子をワイヤー/ケーブル工場で作業用椅子として試験的に使ったところ、結果があまりにも素晴らしかったのでこの工場では、このサドルシートを製造し売り出すことに決めました。

サドル椅子は立ち姿勢と同じ100%、従来型椅子は140%

既に書いたように(そして多くの研究者による研究結果の裏付けからもわかるように)、背骨が自然に休んでいる状態でカーブを描いている場合、あるいはその状態に近い場合は、椎間板内にかかるストレスは最小限に抑えられます。背骨は、平らな座面の椅子に座っている時には自然な状態になりませんし、作業しようと前屈みになるともっとひどい状態になります。Nachemson(上記図参照)によると、「立っている時、椎間板内にかかるストレスは仮に100%とした場合、平らな座面の椅子に座っている時のそれは140%になり、平らな座面の座面の椅子に座り前屈みで作業すると180%なります。これは、重量挙げをする時とほぼ同じです」バンバック・サドル・シートに座ると、背骨は自然な(立ち姿勢100%のストレス)状態でサポートされ、前屈みで作業する時でもこの状態を保つことができます。サドル椅子に座っていると、腰ではなく、骨盤と太ももの付け根の関節のところで前に屈むようになりますが、これは、平らな座面の椅子に座っている時には不可能なことなのです。

実際、平らな座面の椅子に座って前屈みで作業すると、腰部の背骨が反対側に湾曲(前方ではなく後方に湾曲)します。この状態でさらに背骨の自然なカーブも失われると、背骨全体がCの形になります。何かの作業をしている時はずっとこのひどい姿勢のまま、しかも長時間に渡り作業していることがよくあるのです。

サドル椅子のデザインはシンプルですが、健康的で自然な背骨のカーブを維持したままで座って作業できるようになっています。また、足の裏が完全に床につくので、椅子に座ったままでも、仕事を動きまわりやすくなっています。

バンバック・サドル・シートは、今までにないタイプの機能的でモダンなデザインの家具で、革新的な製造方法で作られており、作業中の人の背中を最適な状態に保てる椅子として、世界中で受け入れられ、使用されています。

出展:The Seated Spine & The Bamback Saddle Seat
ISBN:0 646 32703 8. by Mary Frances Gale 1997 ©

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*